AVANT コーヒー部

アヴァント株式会社というシステム会社内のコーヒー部が、珈琲焙煎やコーヒーネタなどについて書いています。

【産地と豆種】5.ジャマイカ:ブルマン(ブルーマウンテン) その1

こんにちは。

アヴァント コーヒー部、【広報】です。

 

豆種の話をする際に、絶対に書くのはやはり

 

 ブルーマウンテン

 

になりますよね。

 

最近はゲイシャなどほかにも高級豆が流通しているのですが、やはりブルーマウンテンについて書くべきだな!と、そう感じざるを得ません。

合わせて同じくマウンテンがつく高級豆ブランド、エメラルドマウンテンについても触れていこうと思います。

 

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ブレンダーは、一度はブルマンを目指す。

 

ブルーマウンテン。コーヒーに関わる人ならだれもが知っている最高級の豆。

その味わいは、すっきりしていて、深くて強い甘みを持っている。それでいてほかの高級スペシャルティコーヒーほど極端なクセもない。「これがコーヒーの味だよね」という、いわゆる一般的なコーヒーの味なのだ。

 

イルガチェフェが持つ複雑な味わいも、マンデリンが持つ深い苦みも持たないこの「ブルーマウンテン」は、そうした個性を持たないことが「個性」で、それが最高においしいという唯一無二のブランドとして確立している。

 

焙煎士もカフェのオーナーも、インスタントコーヒーを作るメーカーもみな、このブルーマウンテンの味わいを一度は目指す。いろいろな個性を掛け合わせて、いわゆる「普通においしいコーヒー」を作ろうとする。

 

それでも、なかなかどうしてこの味にならないわけで・・・。それがブルーマウンテンなのでしょう。

 

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ブルマンのふるさと、ジャマイカ

 

ジャマイカ・・・。私たち世代からすると、

 「ダイドーブレンドコーヒー

の広告で ジャマイカ はコーヒーの産地なんだなぁ と刷り込まれている方も多いでしょう。

 

なんたって、

 「ジャマイカ ジャマイカ ダイドーブレンドー♪」

 って歌ってますからね。

 

そのジャマイカでのコーヒー生産の起源は18世紀。ほかのコーヒー産地とほぼ同じような時期1728年、時の総督がコーヒーの苗をセント・アンドリュー地区に植えたことに始まります。当初の生産量はごくわずか。輸出はたったの27トンでした。

ここから、ジャマイカでのコーヒー生産はどんどん拡大します。最大のブームが訪れたのはなんと18世紀末、1800年!この時期にはコーヒー生産の主力は今の「ブルーマウンテン」地区に拡大しており、686の農園、生産高も記録に残るだけでも15000トンにも上る規模になっていました。実際にはもっと多くの生産高があったようです。

 

実は、この1800年ごろが、生産のピークなのです。

生産が減少した理由は、ほかの地区のような「病気」ではなく、単純に労働者不足。当時のコーヒー生産は奴隷制度のもと、小規模農園をたくさん展開して生産していたのです。1807年に奴隷の売買が廃止されました。奴隷が流入してこなくなったジャマイカでは既存の奴隷で生産を継続していたのですが、1838年についに奴隷解放して以降、一気にコーヒー生産は衰退します。1850年のデータでは農園数は180程度にまで減少。生産量は1/10の1500トンにまで衰えます。

このころまでは、収量重視での生産のため過剰な農地拡大、無理矢理な収量の拡大で土壌はやせ細ってお世辞にもおいしいコーヒーを作れる状況ではなくなっていました。

 

19世紀の末までには、少し終了も回復し4500トンまで生産量は増えていましたが、それでもまだまだ品質向上への取り組みは遅れています。そうした中、政府主導でコーヒーの品質向上を目指した法律が整備されます。

精製と格付けの一元化が行われ、それを実現するためのインフラ設備が整えられました。この取り組みは遅れていた味への取り組みとしては一定の成功を見せます。

 

こうした味への取り組みは続き、第二次世界大戦中の1944年にはジャマイカ中央コーヒー情報センターが、1950年にはジャマイカ・コーヒー委員会が設立されました。

 

ジャマイカ・コーヒー委員会による徹底したマーケティングブランディング、コーヒー情報センターによる味の追求により、この、ある意味「最高級の無個性」であるブルーマウンテンは、世界最高峰のコーヒーという評価を得るまでに成長したのでした。

 

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ブルーマウンテンが、なぜ最高峰なのか。

 

ブルーマウンテンは、なにがブルーマウンテンなのかが明確に定義されている。ほかのブランド「モカ」や「キリマンジャロ」などとの大きな違いがここにあります。

セント・アンドリュー、セント・トーマス、ポートランド、セント・メアリーの4地区、標高は900mから1500mまでで生産された豆のみが、ブルーマウンテンと呼ばれます。これは原産地呼称保護制度にて認定されます。

 

またブルーマウンテンは、育成する標高でハイマウンテン、シュプリーム、ローマウンテンなどという形で厳格に分類されます。

今まで触れてきていませんが、こうした「原産地呼称保護制度」が、コーヒー豆が「産地ブランディング」で成り立っていることの証です。

しかしながら産地ごとに出荷までの取り組みは大きく異なります。

 

ブルーマウンテンのトレーサビリティはほかの地区とは大きく異なります。農園単位でも、品種単位でもなく、「精製所」の名前での取引が行われます。(大型の農園の場合は農園単位での販売が行われるケースもあるようです)

 

ジャマイカのコーヒーの生産量は、現在では、たったの18000袋。 1袋60㎏ですので1080トンほどの生産量です。現在でもその多くは日本に輸入されていますが、世界中でブルーマウンテンの評価は高まっているため今ではその少ない収量をたくさんのコーヒー愛好家が求めている状態であります。この状況が価格の高さを生み、ほかの豆がブルーマウンテン独特の「木樽」に詰め替えられ、「偽物」として多々流通する事態となっているのが現状のようです。コピ・ルアクでも触れましたが、高級豆にはおおむね偽物が付きまといます。

 

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ブルーマウンテンの格付けとエメマンの話はまた次回以降に・・・。